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反応性関節炎(reactive arthritis)

反応性関節炎とは?

  • 反応性関節炎は、脊椎関節症の中の1つである。ある種の感染によって誘発される
  • 診断は、脊椎関節症所見(関節炎や関節外の症状)と先行する感染の証明による
  • 反応性関節炎は多くはself-limitedであるが、一部ではDMARDsや生物学的製剤を要する場合がある
  • HLA-B27陽性の患者では、他の脊椎関節症の診断(例えば強直性脊椎炎など)がついている場合でも、感染後に関節炎などを引き起こすリスクが高くなる。

 

反応性関節炎を疑うきっかけは?

急に出現した関節炎で、痛みが強く、腫れている関節の数が数個以内の時に、特に強く疑います。

具体的にはどんな時に疑いはじめるかというと
・急性の(数日~数週しかたっていない)関節炎がある
・関節の痛みが強い
・関節炎の数が少なく、膝などの大関節(特に下肢優位)に集中している
という特徴を持つ関節炎の時に、反応性関節炎の可能性はどうだろう?と考え始めます。

 

反応性関節炎の患者が、患者自ら【数週前に胃腸炎を起こして】や【実はクラミジアに感染していて】というようなキーワードを言ってくれるわけではありません。むしろ、性行為に関連する感染症の病歴は隠されやすいです。また、エルシニア腸炎のように腸炎症状が目立たない場合もあります。一般の採血項目では、炎症反応の上昇以外には検査異常がみられない、いうようなケースが多いです。

 

反応性関節炎≠感染後の関節炎

反応性関節炎という言葉は、しばしば感染後の関節炎全てが反応性関節炎になるという誤解を与えてしまう表現かもしれませんが、実際には反応性関節炎≠感染後の関節炎です。ライム病やリウマチ熱などは、感染後に起こる関節炎ですが、反応性関節炎ではありません。

では、どういう関節炎なのか。

ここで覚えておくべき定義は、反応性関節炎とは
【感染に引き続いて起こる関節炎で、脊椎関節症の特徴を持つ関節炎】であるということです。

 

 

【脊椎関節症の特徴- Reactive Arthritisの関節炎の特徴】

脊椎関節症の症状の特徴

Enthesitis:腱付着部炎
Arthritis:関節炎
関節外症状として眼症状や皮疹を伴う
脊椎関節症の家族歴がある
HLA-B27陽性

などの特徴を、Reactive arthritis患者では持っていることがあります。。

膠原病領域の成書であるKELLYという本のReactive arthritisの項目には、

”In practice therefore it is best to regard only patients with new definite joint swelling, enthesitis, or inflammatory back pain as having reactive arthritis”関節炎と腱付着部炎、もしくは炎症性腰痛がある人のみを反応性関節炎と分類するのが良いだろう。とあります。

キャプチャ

 

これは、脊椎関節症の分類基準(末梢関節炎のASAS Criteria)です。

関節炎がある方には、これらのような症状や家族歴がないかどうか、必ず問診しましょう。

 

反応性関節炎の分類基準

反応性関節炎の分類基準は、診断の思考プロセスに役立ちます。

1.古典的な臨床的特徴を持っている
・非対称性の、少関節炎(5個より少ない関節)
・下肢優位の関節炎
・腱付着部炎
・関節外症状
に加えて
・感染症(サルモネラ・カンピロバクター・エルシニア・シゲラ・クラミジア)またはこれまで反応性関節炎を起こすと報告されたことがある感染症の存在
がある場合

 

2.急性の関節炎で、単関節炎や軸関節炎(仙腸関節~脊椎の関節炎)で、感染症(サルモネラ・カンピロバクター・エルシニア・シゲラ・クラミジア)またはこれまで反応性関節炎を起こすと報告されたことがある感染症の存在

3.古典的な臨床的特徴+尿道炎/子宮頸炎or下痢が、症状発症の6週間以内にある場合。

 

のいずれかを満たせば、反応性関節炎に分類されるというものです。
これを見ると、なんとなく特徴が掴みやすいかもしれません。

 

反応性関節炎の関節炎の特徴

急性発症の関節炎で、炎症を起こしている関節の数は少なめで、(Oligoarthritis)、多くは下肢で、体重のかかる部分に出てきます。関節炎は、一般的には激しい関節炎で関節液も溜まりやすく、敗血症性関節炎や結晶性関節炎を鑑別に挙げるほど強い関節炎症状となります。(例外的に軽い人もいます)。腫れて痛いです。

 

反応性関節炎で書いてある、腱付着部炎とは?

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上の図を見てください。関節炎は、関節包に炎症を起こす状態ですが、脊椎関節炎の症状のスタートは、腱付着部の炎症から始まります。その炎症が、関節内に波及します。

 

脊椎関節炎患者さんの腱付着部をエコーでとると、下記のようになります。
これは、膝蓋骨につく腱の付着部です。Clin Rheumatol (2010) 29:133–142に、OPEN ACESSの超音波の論文があり、絵が綺麗で見やすいエコー評価方法があります。乾癬のエコーですが、関節炎・付着部炎・腱鞘炎のエコー所見は同様な所見になります。

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腱の=====という構造が途中で見えづらくなっており、血流増加を伴っています。これは付着部炎のエコーです。

 

エコーは、こういう所見ですよという提示のために掲載したものです。実際の臨床では、腱付着部炎の評価は、腱付着部の圧痛の有無を見ます。エコーがなくても評価することは可能ですので、押してみましょう。

具体的に、どの腱の痛みを評価するか、というと、

Maastricht Ankylosing Spondylitis Enthesitis Score (MASES) provides a helpful list of 13 major entheses: first and fourth costochondral joints, L + R; anterior and posterior iliac spines, L + R; iliac crest, L + R; fifth lumbar spinous process; and Achilles tendon insertion, L + R, which should be checked

両側第一肋軟骨、両側第四肋軟骨、両側上前腸骨棘、両側下前腸骨棘 、第五腰椎棘突起、両側アキレス腱

というのが挙げられていますが、これに加えて足底部の腱付着部(測定腱膜炎)の有無を見ると良いです。

 

反応性関節炎の関節外症状

皮膚の発赤、膿漏性角皮症(手のひらと足裏のうろこ状の吹き出物を伴うような皮膚変化)がないかどうか足底部や手掌を探します。The characteristic skin rash associated with reactive arthritis, keratoderma blenorrhagica should be sought on soles and palms。他の皮疹としては、亀頭部の輪状白斑が出る場合があります。

エルシニア感染後では、結節性紅斑がみられることがあります。口や口蓋の潰瘍は痛みが出にくいことが特徴で、患者は自分で気が付いていないこともあります。なので、こちらから必ず評価しましょう。結膜充血は痛みがなく、痛みがあるときにはブドウ膜炎を考え、必ず眼科を受診してもらう必要があります。

 

起因菌となるもの

本来の定義としては、反応性関節炎の起因菌とされるのは、腸管感染の原因となる菌や泌尿生殖器系の感染症である。例外として起因菌となるその他の部位の感染としてchlamydophilia pneumoniaeがある。

 

本来のReactive arthritis(反応性関節炎)を起こす菌は、上にあげたような部位の感染症です。
しかし、反応性関節炎を起こす菌として、溶血性連鎖球菌後の関節炎(リウマチ熱ではなく、溶連菌感染後の反応性関節炎という概念がある)と、結核に関連した反応性関節炎(ポンセ病という)を含めて反応性関節炎として名付けている場合もあります。

 

腸管感染症の菌
サルモネラ
カンピロバクター・ジェジュニ
エルシニア
シゲラ
クロストリジウム・ディフィシル

泌尿生殖器系
クラミジアトラコマティス

その他
クラミジアニューモニア

症例報告レベルでは、マイコバクテリウム・ボヴィス。E.coliが何例かはあるようです。

 

 

反応性関節炎の診断

炎症マーカーの上昇がみられ、CRPの上昇と、好中球を主体とする白血球上昇がみられるが非特異的で、採血の一般項目では疾患特異的なものはみられません。

Reactive arthritisの原因となる起因菌を同定することが診断へのプロセスに重要で、腸管由来のものを疑った場合には、便培養をするべきです。サルモネラやエルシニアは症状改善後も数週間、腸管から検出されます

※ここで重要なことは、エルシニアを疑った場合は、一般便培養で提出してもエルシニアは検出できばい場合があるため、検査室にエルシニア感染を疑っている旨を伝えることが必要です。

生殖器系の感染では、尿道または子宮からのスワブを行うべきで、必要であれば、咽頭や直腸からも施行するべきです。しかし、クラミジアを培養するのは困難なため、尿サンプルを用いた核酸増幅法または患者自身がスワブして提出するのが一般的です。

NAATs(Nucleic Acid Amplification Tests) have become the preferred diagnostic and screening test for C. trachomatis genital infection in the United States because they are sensitive and can be used for noninvasive testing without the need for a pelvic examination or a urethral swab.

男性では、尿のPCR,女性では尿のPCRも一つの方法ですが、ゴールドスタンダードは膣からのスワブのPCRが良いです。(下図の一番下の段)

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(Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases, 182, 2154-2170.e6から引用)

 

反応性関節炎の治療

80-90%近くの人が自然に改善するため、DMARDs(サラゾスルファピリジンなどの抗リウマチ薬)は必要ないことがおおいですが、使用すると効果が得られる例があります。。

長期間作用型のNSAIDsを定期で使用して、(ただし消化管出血や心疾患などのリスクを考慮したうえで)、治療をする。ナプロキサン(ナイキサン®)などは抗炎症効果が高いので、若年者では好まれることがあります。

症状は6-12か月持続することが多いが回復することが多いです。若い患者でもともと活発な人では、運動をやめてしまったり人によっては雇用に支障をきたしてしまうことすらある。そういったソーシャルな面のサポートは重要です。

Reactive arthritisに対するDMARDsのスタディーはほとんどなく、自然史的にも自然寛解する病気なので臨床試験そのものがとても難しいですが、サラゾスルファピリジンは効果があるかもしれないというスタディーはあって、62%vs48%で改善の上乗せがあったという報告があります。

実際には、感染の治療+NSAIDs NSAIDsを切り替えてみて効果を見るなどをしても症状の改善が悪い場合、サラゾスルファピリジンを追加すると効果がある例を多く経験します。

サラゾスルファピリジンを使用する場合には、添付文書では血液像を含む血球と肝機能のフォローアップを2週間に1回という推奨があることは覚えておく必要があります。

サラゾスルファピリジンで失敗した人は、MTXやレフルノミドが良いと考えられるがエビデンスは乏しいです。

抗菌薬としては、反応性関節炎は本来無菌の関節炎なので、抗菌薬で治療をする関節炎ではないと考えられています。ただし、クラミジア感染は特に女性では生殖器へのダメージを残さないように治療が必要です。パートナーの治療もしましょう。

関節炎に関連して、長期的な抗菌薬投与が予後に良い可能性も報告があり、定まっているものではありませんが今後出てくる可能性もあるため、現時点でのエビデンスはどうか、注目する必要があります。