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抗リン脂質抗体症候群

抗リン脂質抗体症候群は、

①血栓症(脳梗塞や深部静脈血栓症など)

②流産(10週以降)

③抗リン脂質抗体陽性

を主な特徴とする自己免疫疾患です。

 

抗リン脂質抗体症候群の診断は、特徴的な臨床症状と、少なくとも12週間以上期間を空けて再検査して、持続して抗リン脂質抗体が陽性の場合に、抗リン脂質抗体症候群と診断できます。

 

抗リン脂質抗体症候群の分類基準

antiphospholipid-syndrome

抗リン脂質抗体症候群の診断は、上記の「サッポロ基準」が用いられます。ただし日本では、ELISAによるIgGの抗カルジオリピン抗体と、ループスアンチコアグラントしか測定することができません。

 

つまり、IgM-抗カルジオリピン抗体、IgG-抗β2GP1抗体、IgM-抗β2GP1抗体の3つは測ることができません。検査項目に収載されているのは抗β2GP1依存性抗カルジオリピン抗体というもので、紛らわしいですが異なる物です。

 

日本の現状に即した抗リン脂質抗体の検査は、

①抗カルジオリピン抗体陽性—>抗リン脂質抗体陽性と判断

②抗β2GP1抗体陽性—>抗リン脂質抗体陽性と判断

※①②はLow titerの場合は除く

③蛇毒法によるループスアンチコアグラント陽性—>抗リン脂質抗体陽性と判断

この3つが陰性の場合、APTTの延長を認めたら、中和法によるループスアンチコアグラントを測定します。これで陽性である場合も、抗リン脂質抗体陽性と判断します。

 

抗リン脂質抗体陽性を認めたら12週間後に再検査を行い、一過性のものを除外する必要があります。

 

これらで判断が難しい場合、APTTの延長があれば交差混合試験という検査を行ったり、大学などの研究施設に検査を相談するという流れになります。

 

また、臨床的には抗リン脂質抗体症候群が疑わしいもののループスアンチコアグラントと高カルジオリピン抗体が陰性の場合には、IgAの高カルジオリピンやIgA型の抗β2GPIを調べることもされています(こちらも保険収載はありませんので、研究室レベルでの測定になります)

 

ループスアンチコアグラントは、より特異的で血栓の予測因子としては感度は低いものの血栓症との相関が強く、陽性であればリスクが高いとされます。妊娠合併症を予測するのに、ループスアンチコアグラントが最もよく相関します(後述)

 

抗リン脂質抗体症候群の特徴的な臨床症状とは

抗リン脂質抗体症候群の臨床所見は、無症候性で抗体のみ陽性のパターンから、CAPSという急速進行性の血栓による臓器病変まで様々です。

 

血栓症

抗リン脂質抗体症候群で出る血栓症(動脈・静脈ともにおこる)は、すべての臓器を傷害しうるものです。静脈血栓症や動脈血栓症の性状だけでは、他の原因による血栓とは区別することが困難です。

重症度や、発症時の若さ(血栓を起こす年齢に比して若い)、珍しい発症部位(肝や矢状静脈洞、上肢の血栓症)であれば、抗リン脂質抗体症候群の関与を疑うきっかけになります。

 

腎症

Renal thrombotic microangiopathyという糸球体の毛細血管内皮細胞の障害と、腎血管の血栓が原因の腎障害がおこり、蛋白尿や低補体血症を起こし、時に腎不全となります

ただし、血尿や円柱は出にくいため、これらがあるときはSLEを合併している可能性などに考慮が必要です。

 

妊娠関連

抗リン脂質抗体陽性患者の流産は、典型的には10週以降におこるものと定義されます。ただ、10週以前の流産に関しては染色体や遺伝子の影響などにより病気のない方でもある程度の確率でおこりうるものであるため、10週未満の状態に対して抗リン脂質抗体症候群の関与の評価は難しいです。

妊娠では、妊娠中期(第二期)までは正常で、その後胎児の成長がおそくなり、羊水が減少してきます。また出産前には重傷な早期の子癇前症やHELLP(Hemolysis, Elevated Liver enzymes, Low Platelets)症候群を起こすリスクが上がるとされます。

 

PROMISSE study という抗リン脂質抗体陽性患者の妊娠中の予後を比較したStudyでは、ループスアンチコアグラント陽性が悪いアウトカムとの関連が強く、他にはSLEがあること、以前の血栓歴があることもリスクファクターだったという報告があります。http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/art.34402/pdf

 

その他の症状

抗リン脂質抗体症候群の患者さんの多くで、リベド疹や血小板減少が起こる。これらの症状は必ずしも抗リン脂質抗体症候群に特徴的ではありません。リベド疹は立位にしてしばらく時間をおいて見てみるとよりはっきりする皮疹です。

 

心臓の弁膜症(疣贅・弁の肥厚)は罹病期間が経過した後期に出てきやすい症状ですが、頻度や原因は現在のところまだ不明です。

 

肺高血圧症の合併も知られ、これは繰り返す肺塞栓症の影響または小血管の梗塞により起きるとされます。時に肺胞出血(びまん性の肺胞出血)の報告もあります。

 

脳神経障害としては、脳梗塞以外にも、脳神経学的局所症状を欠く症状で、集中力の低下や記銘力障害や一時的なめまいなどの症状を起こすことがあります。Lupus anticoagulant hypoprothrombinemia syndromeといって抗体のプロファイルにより出血傾向に傾き脳出血を起こすこともあるとされます。

 

Catastrophic Antiphospholipid Syndrome

CAPSは頻度の低い病気ですが、突然発症し命に関わる病態です。

 

血栓症が中動脈から小動脈に起こり、多発し、数日の間に脳、心臓、肝臓、副腎、腎臓、腸管の梗塞など至る所に多発梗塞を起こします。注意するべき点としては、これは十分な抗凝固療法を行っている方にもおこってしまうことです。220人のCAPSのレビューでは、主な症状は70%で腎臓、66%で肺、 60%で脳、52%で心臓、47%で皮膚に起こったと報告されています。http://ard.bmj.com/content/64/8/1205.full

 

CAPS Classification Criteria

確診(Definite1-4を満たす
  1. 3つかそれ以上の臓器障害、組織障害がある
    (通常臨床的に血管の閉塞が適切な時に画像所見で証明されている)
  1. 通常瞬時に、もしくは1週間以内に症状が進行する
  1. 最低1臓器/組織の細血管の閉塞が組織学的に確認されている 病理では有意な血栓が存在するべき 血管炎は併存してもよい
  1. 抗リン脂質抗体があることが検査で確認されていること(ループスアンチコアグラントか抗カルジオリピン抗体か抗β2-GP1抗体)
疑診(Probable
上記2-4を満たすが2つの臓器障害、組織障害のみ
上記1-3全て満たすがCAPS発症したあと6週間以上あけて再確認されていないとき(早期の死亡など)
上記1 2 4を満たす
上記1 3 4を満たすが3つめの臓器障害が抗凝固療法施行にも関わらず1週間以上1ヶ月以内に発症する

 

CAPS一般的には突然発症し、急激に進行し命に係わります。早期診断が必要ですが、特にこれまで抗リン脂質抗体症候群の既往がない場合には診断が難しいことがあります。似たような病態にTTPやDICなどがありますが、CAPSの場合には抗凝固療法など他の疾患と異なる治療戦略をとる必要があるため、この疾患に留意することがとても重要です。

 

 

病理検査

特にCAPSのクライテリアなどでは、病理が診断に用いられます。皮膚・腎臓・その他の組織で血栓閉塞がどのcaliber (径)の動脈、静脈でも起こり、急性~慢性の内皮障害がおこり、後期に再疎通が見られます。壊死性の血管炎が見られる際には、SLEや他の自己免疫疾患の合併を考える必要があるとされます。

 

鑑別診断

感染関連の抗カルジオリピン抗体は、通常は一過性で、IgM型>IgG型でみられることが多いとされます。12週後に再検が必要です。

 

抗リン脂質抗体保有率は正常な方でも年齢とともに増加し、年齢が上がるにつれて血栓のリスクもあがることから、60歳以上の抗リン脂質抗体症候群の診断は難しくなります。持続する抗リン脂質抗体の力価が高いこと、リベド疹があること、血小板下減少を伴うこと、他のリウマチ疾患の併存することなどは参考になります。

 

1回のみの、10週以前の流産で、抗カルジオリピンが弱陽性の場合の医学的判断は難しいですが、一般的にはそれは胎児のクロモソームが原因の検査異常か、感染関連か、または母親のホルモンか、解剖学的な異常が原因であることの方が多いとされます。

 

マネージメントの注意点

現行の治療方法に基づいた適切な予防・2次予防が必要ですが、それに加えて抗リン脂質抗体症候群と別に併存している血栓リスクは、なるべく下げていく必要があります。血栓症のリスクファクターである高血圧や糖尿病、ネフローゼ、静脈機能不全、不動状態はなるべく改善させていくようマネージメントします。

 

周術期は手術自体が血栓リスクを増す状態になるため、その前後に抗凝固療法を追加するなど、適切なマネージメントが必要です。

 

血栓を起こしやすい物質(エストロゲンを含むピルなど)は、現時点では安全とはいえません。それは症状のない人でたまたま高タイターの抗体が判明した場合でもそうです。なるべく避けられるリスクを避けていく方向でマネージメントします。

 

治療方法

現在、抗リン脂質抗体症候群の治療に関しては発展途上です。

臨床症状 治療方法
無症状 治療しない
静脈血栓症後 ワーファリン INR2.5
動脈血栓症後 ワーファリン INR2.5
再発する血栓症 ワーファリン INR3-4 + Aspirin
初回の妊娠
1回のみの10週未満の流産歴
治療しない
1回以上の胎児死亡 or
3回以上の早期の流産
母体の血栓症既
往なし
予防のヘパリン+
Low dose aspirinを妊娠中~
出産後6-12週まで
母体の血栓症の既往
(流産歴にかかわらず)
予防のヘパリン+
Low dose aspirinを妊娠中
出産後はワーファリン
弁疾患(心臓) 有効な治療方法は知られていない
もし塞栓症や心臓内の血栓が認められれば抗凝固療法
血小板低下>50000 治療しない
血小板低下<50000 ステロイド・IVIG
CAPS 抗凝固 ステロイド
IVIG  血漿交換

たとえばこれはKELLYという教科書に記載されている一例です。

 

また、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26122952にも別の治療指針のようなものが記載されています。

 

保険収載や、産婦人科領域など日々Up dateされることが予想されますので、治療のたびに知識をUp dateしていきましょう。最近ではNOACに関しても注目され、リバロキサバンは臨床研究が始まっています。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25940537

 

ヘパリンは抗リン脂質抗体症候群による流産歴があり、抗リン脂質抗体陽性の患者では使用されており、日本ではカプロシンⓇが適応となっています。低分子ヘパリンを使用できる場所では、10週以降に流産歴のある患者に、予防的にヘパリン(enoxaparin:クレキサンⓇ 30 ~ 40 mg 皮下注射)を使用し、アスピリンも併用するレジュメがあり、これにより、胎児の生存率が50%から80%に上昇するという報告があります。

 

分娩後の血栓リスクのため、出産後に関しても抗凝固療法が分娩後8-12週の間必要となり、必要であればワーファリンに切り替えることもあります。

 

抗リン脂質抗体は陽性ですが症状のない人もおり、症状がなくたまたま抗リン脂質抗体陽性の人に予防的なアスピリンの有用性についてはまだ検討中の段階です。最近のメタアナリシスでは、初回血栓症予防に対するアスピリンの有用性が出ていますが賛否両論のようです。

 

 

長期の機能予後は、以前は原発性の抗リン脂質抗体症候群は10年間で3分の1の人が永久的な機能障害を起こし、5分の1の人が日常生活を送ることができなくなったという報告もあります。適切な予防方法と悪化時の早期発見が必要な疾患です。